【本】ひとりでできる特許・実用新案のとり方

この本を読んだきっかけ

私は、会社では技術者としてあたらしい技術となるようなものを開発し、時に特許を出願する機会もあるわけですが、基本的には特許関連の主な業務は知財部の担当者の方を経由して弁理士さんに行ってもらうため、私自らが特許を出願する手続きに関わることは全くありません。私がする仕事といえば、自分の考えた技術を弁理士さんに、なるべくわかりやすく伝えることだけで、あとは先行技術との比較や、明細書のドラフト作成などは、すべて弁理士さんがやってくれ、大抵、自分で一からやるよりは圧倒的に良いモノが出来上がってきます。こういったラクチンができるのは当然、会社が相応のお金を弁理士さんに支払っているからで、もし、そのようなお金がなければ、自分でやらなければなりません

例えば、一般的には弁理士費用は、40万円くらいから、時に100万円以上ともいわれますが、中小企業が発明をしたときに、その費用をポンと出すことは難しいと思います。一応、特許庁の減免制度や、弁理士会や地方自治体の支援制度などを活用すれば、ある程度は負担の軽減は可能ですが、それでもやはり金額は小さいモノではなく、自分で取得するという選択肢も入ってきます

この本を選んだ理由としては、まずは知っているようで意外とブラックボックスが多い特許取得のプロセスについて知りたかったこと、あるいは、技術を持つ中小企業さんに戦略的に特許取得を提案するようなことがあった場合、自身が特許について、良く知っておきたかったということ。また、老後の楽しみとして、個人的に特許を取ったりすることをできるように、今から少し訓練しておきたいなぁ…という気持ちが多少あったりしたからです。夢は、茅ケ崎のエジソンと呼ばれ、”おちゃっぱー”のような発明をしながら日がな一日を過ごす老後です(笑)。

この本を読んで得た気づき

この本は、特許・実用新案・意匠・商標に関することで(やはり、特に特許のパートが中心ですが)、出願に関する書類について、具体的なフォーマットを示し、どの項目にはどのようなことを書けばよいかといったことを、かなり詳しく書いてあります。確かにこの本があれば、少なくとも出願に関することは、一人でできそうだな…という気分にはなります。

もちろん、特許にしろ何にしろ、出願して終わりではなく、その後の経過によっては、別途アクションを起こさなければ権利化には結びつかないこともありますが、典型的なアクション、例えば、進歩性の欠如によって、拒絶理由通知が来た場合の対処、などについても簡単に説明が書かれているので、ある程度心の準備をしておくことができます

それに、ひとりで出願とはいっても、実はある程度相談相手がいるということをこの本を読んで知りました。例えば、拒絶理由通知が来た際に、基本的には反論となる補正あるいは意見書の書類を送付するわけですが、それとは別に「審査官面談」といって、その審査を行った審査官と直接フェイス・トゥ・フェイスで話をする機会があるということです。弁理士さんのように、経験豊富な方であれば、書類上のやり取りでうまく進められるかもしれませんが、ひとりで出願の人は、基本的には素人ですので、書類だけのやりとりでは、何かと心細いものです。こうした機会が得られるのは何かと心強いと思います。

また、特許権の侵害をしているか、していないかの判定というのは、非常に難しいことだと思いますが、こうした場合にも、専門家の鑑定という手段のほか、特許庁に鑑定を求めることもできるようです。有料ではありますが、これも心強い仕組みと思いました。

少なくとも私が、もし今から特許をひとりで出願しようとなった場合に、以前なら少し心のハードルが高かったように思いますが、今はかなりハードルは下がりましたし、中小企業さんに、特許取得を戦略的におススメする場合にも多少自信がついた気がします。(もちろん、私は弁理士ではありませんので、代理人行為は行うことができません。)

注意点

私は、古本としてこの本を入手したのですが、この本、出版が非常に古いのが難点です。特許等にまつわる法律も、産業の発展とともに刻一刻と変化し、ここに書かれていることも、最新の法律では、改定されている部分がいくつかあります。例えば、実用新案権は存続期間が長くなっているなどですね。法律以外でも、たとえばIPDLというのはJ-PlatPatに置き換わっていたりなどですね。手続きフローの根幹の部分はあまり変わらないので、ざっと目を通して感覚を理解してみたいくらいであれば、本書でも問題ないと思います。本気で特許を取りに行くつもりであったり、新品で買う予定があるのであれば、本書の後継である、以下の本の方が良いかもしれません。いずれにしても、本の情報は刻一刻と古びて行ってしまうものなので、最新の情報は、絶えず特許庁のウェブページなどにあたり、調べておくことが大事だと思います。

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