前回のカンブリア宮殿より。
カンブリア宮殿は、結構好きで見ています。(ここ一年近くは見ていなかったので。見ていました、が正しいですかね。)ある程度成長した会社の改革話よりは、やはり、腕一本で頑張ってきた創業者のお話が面白いですね。
今回は、蒸気で、外はカリカリなかはモチモチのトーストが焼けるという独創的なトースターなどを開発して急成長しているバルミューダというベンチャー企業のお話でした。
今回出演された寺尾社長の、ひときわ目を引くのはその異色の経歴でしょうね。高校を中退して(その理由も異色だったのですが(笑))、ロックミュージシャンを目指して10年、目が出ないことに気づき、こんどは町工場巡り。偶然出会った工場の社長の下で金属加工の腕を磨き、ラップトップパソコンの冷却器具を引っ提げて創業、今に至るということです。もともと大手家電メーカー勤めというわけでもなく、理工系知識を持っていたわけでもなく、そこから、あのような高付加価値な家電で年商を次々伸ばしているというのが素直に素晴らしいなと思います。
白物家電は、特にテレビ、冷蔵庫、洗濯機は、その昔三種の神器といわれ、それを手に入れるために皆一生懸命働いてお金を稼いでいた…などとよく言われますが、激しい売り上げ競争の果て、バブル崩壊、失われた20年で、大手メーカーは白物家電事業を手放すような状況が続く中で、「家電の世界というのは、もう、一流技術者によって、さんざんいろいろ創意工夫がやりつくされた世界で、新たな、大きな付加価値を生み出すような事業にはできないのでは?」と思いがちです。特に、私も理工系出身ですので、(今の会社ではそういうことはないと思われますが)「3万円でも売れる扇風機を作れ!」などと命令されたら、頭を抱えてしまうでしょう。もともと頭が固いのか、常識にとらわれすぎて新しい発想が出なくなってしまっているのか。とにかく、「もうやりつくされたと思われた世界」の中で、「新たな抜け道」とでもいいますか、そういうのを探そう!という気力が欠けてしまっているなーと、自分でも反省しています。そんなひたむきな努力、素直さ、実直さとでもいいましょうか、それを持ち続けている寺尾社長には頭が下がります。
寺尾社長は、「トースターを作ることを考えるのではなく、トースターを使ったときに顧客が嬉しいと感じるその体験をつくるのだ」という旨のことをおっしゃっていました。今風の言葉でいうと、「モノづくり」でなく、「コトづくり」ということになるのだと思います。多くの人、特に先進国では、物質的に豊かになり、モノよりもより一過性の体験・思い出のようなものにより高い価値を見出し、それにお金を払うのだということで、私の会社でも「コトづくり」「コトづくり」とマントラのように唱えまくっています。が、なかなかそんなにすぐに出てくるものではありません。仮に2,3アイデアが出てきたとしても、いくつかのステークホルダーを説得して回らなければ実現できなかったりすると、それはそれでしんどかったり。その点、寺尾社長は、いちどこうと決めたら絶対にやり抜く、だれにも相談しないという、強い意志の持ち主。ある意味頑固かもしれませんが。結局新しい形を生み出すことができる人、できない人の差というのはそういうところなのだと思います。
まったくもって余談ですが、そういえばその昔、あれはたしかがっちりマンデーだったと思いますが、ダイソンの創業者の方が出演なさっていて、MCの加藤さんが創業したきっかけを聞いた時でしたが、「掃除機を使っていたら、ゴミパックがいっぱいになってしまい交換が面倒くさかった。ゴミパックなど交換しなくてもよい掃除機が創りたくて創業した」というような旨のことをおっしゃっていたように思いました。(うろ覚えなので間違っていたらごめんなさい)。何かを生み出す人はそういう人なんだろうなーと、その時も思いました。
コメント